入管法の基本的な考え方

入管法(正式名称:出入国管理及び難民認定法)というのをご存じでしょうか?

すべての人の出入国の公正な管理を図る…(中略)…手続を整備することを目的とする。」とその第1条にあります。

 

日本国から海外へ出国するすべての人、海外から日本へ入国するすべての人に適用されます。

「観光ビザ」などと言われる観光用の在留資格などではそれほど意識することは無いと思いますが、例えば外国人が中長期に日本に滞在しようとすると、手続きが極端に難しくなります

 

何をもって公正と言うのかは難しいところですが、入管法の考え方の根本にあるのは、

他の国も多かれ少なかれそのようなシステムになっているはずなのですが、

 

端的に表現すると、

日本の国益になる外国人には入って来て欲しい、

反面、

日本の国益にならない人、国益になるか分からない外国人は、

日本から出て行って欲しい、

ということだと思います。

 

国益というものが最優先の作りになっているため、人権、特に外国人の人権が問題になりますが、

本当に残酷な環境で本国には住めないということであれば、難民認定手続きの中で評価されることになり、

そうではない、例えば日本に住みたいという外国人本人の思いとか情熱だけとか、

本当に真面目で一所懸命だからその外国人を雇いたいという経営者の思いがあっても、

それだけでは入管法上では考慮されないということになります。

 

外国人観光客は、短期にお金を落としてくれて短期で出国してくれるので、経済活性化とリスクのバランスからすると、国益に資するという評価になると思いますし、

外国人留学生については、日本としての国際貢献の一手段でもあり、正式な就職が認められずアルバイト程度であれば、国益に影響が少なかろう、

外国人技能実習生については、日本としての国際貢献の一手段でありつつ、実態としては不足した労働力の担い手となって貰っている観が強く、それに数年後には確実に本国に帰って貰うということで、労働力不足と経済活性化という観点では国益に資するということになろうかと思いますが、労働力の搾取という危険性があり、人権問題が深く関わってきます。

日系外国人については、素性が明らかであれば、準日本人として待遇しようということで、国益というよりは、日本人に由来する国家としての存在意義の観点から、

という感じかと思います。

 

以上のことを踏まえてですが、一般の外国人がいざ日本で就労しようとすると、とたんに難しくなります。国益という評価基準が強く出てきます。

 

外国人の誠実さや情熱は当たり前、その上での高い能力が求められます。

高い能力とは、その人ならではのある種の専門職とか、日本人を指導する位の能力ということです。

能力的には平均的だけど、一所懸命で真面目というは、人徳としては大事なことですが、

入管法的には、日本人の就労の機会を奪ってしまう外国人というマイナス評価になります。

 

ついでですが、「有能だからOK」ということは全くありません。

入管法の手続きを正面からクリアーしようとすると、本当に厳しい場面がありますが、

そうだからと違法な方法を取ったり、軽い気持ちでズルしようして不誠実と評価されると完全にアウトです。

下手に有能な外国人が不誠実であると、逆に日本の国益を大きく損なう危険性があります。

 

 

 「高い能力」とは

高い能力と言うのがどういうものか、具体的にいうと、

・「大学卒業」なのか、

あるいは、

・専門的に「10年以上の実務経験」を積んできたか、

というのが原則になります。

例外的に、日本の専門学校の卒業とか、実務経験5年で可とかありますが、

成績とか、就労先の会社の状況、その中での職務とのマッチングなど、評価が厳しくなります。

 

最近は、事業者様から専門学校生の外国人就労相談の機会が増えましたが、

この「大学卒業」と「専門学校卒業」のレベルの違いが大きいことを認識している事業者様はとても少ないです。「

専門学校卒業」の場合は、よほど用心して環境を整えないと、不許可になる可能性が大きいということです。

 

外国人本人の能力を間接的に評価するものとして、

賃金同様の職務の日本人従業員以上のものでないといけません。

 

低額な賃金で就労して貰える技能実習の情報と混同してしまうせいかと思いますが、

多くの事業主様が入り口で勘違いしてしまうのが、外国人なら安く雇えると思ってしまうことです。

外国人を雇うときは、安い労働力を宛てにしてはいけないのです。

むしろ、日本人よりも高い給料を払うイメージです。

技能実習でも、教育していく責任、そのための教育計画、福利厚生など、決して安価で出来るものではありません。

 

それなら、外国人を雇う意味がないという事業者様もいらっしゃいますが、

それは事業者様の都合であって、国益という観点から大きくずれていることになります。

 

しかし、最近では、いくら募集しても労働者が集まらないということで、

割り切って比較的高い給与で外国人を雇う事業者様も増えて来ている感じがします。

 

また、外国人観光客が激増してますので、例えば日本語、中国語、英語の出来る外国人については、日本人より遥に好条件の就労の機会も増えているようです。